99%の散気管は目詰まりする
「目詰りしない」と言い切るだけの根拠・証拠があるのか
日本においては、ほぼ全ての散気管メーカーが、「目詰りしない」「目詰りしにくい」とPRしています。
しかし、目詰りしない理由について、合理的な根拠を挙げて説明しているメーカーは、まったく見当たりません。
本当にその散気管が目詰りしないならば、10年とか15年とか、ノーメンテで使われている実績を紹介するのが当然ですが、そのようなPRをしているところは、当社を除いてありません。
非常にBOD負荷が高く、曝気槽のMLSS濃度が10,000mg/Lを超える「豚や牛の糞尿処理」の現場でも、あるいは、SS濃度が30,000mg/Lの某製糖工場で12時間おきの間欠運転を行っても、OHRエアレーターはまったく目詰りしていません。10年でも15年でも、完全にノーメンテです。
非常に過酷な条件下でも「目詰りナシ」「ノーメンテ」である経験を長年重ねていますので、当社は絶対の自信を持っています。
しかし当社の散気管が「目詰りナシ」を掲げていますので、他社も同様のPRをしなければ歩が悪い。
そこで、本当は目詰りして数ヶ月〜数年で交換を強いられるのに、またそれをメーカーは把握しているのに、「目詰りしない」「ノーメンテ」とPRして、お客様は騙されて泣き寝入りをしているケースを、いくつも見ています。
こうした被害に遭わないための自衛策として、散気管メーカーのPRが嘘か本当かを見極める眼が必要です。
穴がたくさん開いているタイプの散気管が、絶対に目詰りする理由
汚泥は必ず逆流し、ブロワー熱風で乾く
世界中で、ゴムシートに穴をたくさん開けたタイプの散気管「ゴム製ディフューザー」が使われています。
円盤状であったり、チューブ状であったりと形状は様々ですが、基本構造は同じで、数百ミクロンほどの微細な穴に空気を送り込んで、数ミリサイズのバブルを作ります。
(右上写真参照)
ゴム製ディフューザーのメーカーは、【ゴムは収縮するから、汚泥水は散気管内部には逆流してこない。だから目詰りしない。】という「逆止弁効果」を謳っています。
しかし、それが完全な嘘であることは、水処理に携わる技術者であれば誰もが実体験として知っています。
実際の現場では目詰りして、早ければ数ヶ月で交換を強いられているのが実態です。
ゴム製ディフューザーでは最高級の材質であるシリコーンゴム製であっても、目詰りします。
(右中央写真参照)
水中でエアーを吐き出すと、 水圧という通気抵抗があるためにエアーは縮み、 途切れ途切れに、 息継ぎしながら吐き出されます。
つまりエアーは、 【出て、止まって、出て、止まって…】 を繰り返します。だから、球体のバブルになります。
(右下写真参照)
そして、エアーが吐き出されて止まった一瞬、 散気管内部は負圧になるため、 水深圧に押された汚泥水はエアー吐出口から散気管内部へと入り込みます。
ゴム式散気管のエアー吐出口は微細な穴であるため、逆流した汚泥水は外に出ていかず、ブロワーの熱風によって散気管内部で乾き、 固着し、 溜め込まれ、 閉塞を起こします。
つまり自然法則上、 エアーを水中で吐き出すと同時に、汚泥水は散気管内部へと逆流してしまうのです。
※ブロワーは吸い込んだエアーを圧縮するため、圧縮熱が加わって、真夏には70~80℃の熱風となります。
この事実は見過ごされがちですが、散気管の目詰りを語る上で、ブロワー熱風問題は非常に大切です。
ゴム製ディフューザーは、ヨーロッパで盛んに開発されてきました。そのヨーロッパでは、ゴム製ディフューザーは「当然、目詰りが起きるから定期交換するもの」と受止められ、それが常識として定着しています。
日本でも、早くその常識が定着して欲しいものです。
より詳しい説明は、「ゴム製散気管が目詰りする理由」をご覧下さい。
大口径のエアー吐出口であっても、目詰りする理由
当社の散気管(OHRエアレーター)に着想を得て、大口径のエアー吐出口を持ったタイプの散気管(縦型散気管)も複数登場しています。
決まり文句は【目詰りしない】ですが、実は目詰りするものがあります。
意外に思われるでしょうが、大口径のエアー吐出口であっても目詰りしてしまうものがあります。
実際にユーザーから、【他社製の縦型散気管を採用したが、目詰りしてしまって困っている】という相談が寄せられますので、その事実を把握してしまうのです。
見きわめ方は、実はかんたんです。次のチェックにあてはまるものは、目詰りします。
チェック❶:エアー吐出口が1個でなく、複数個に分かれている。
(例:エアー供給元は1ヶ所だが、散気管内部では4ヶ所からエアーが吐出される)
チェック❷:エアー吐出口は1個でも、汚泥水の通り道を塞ぐように、構造物がぎっしりと取り付けられている。
チェック❶:エアー吐出口が複数個に分かれているか、完全に1個だけか
エアー吐出口を複数個(2個とか4個とか)にする、ということは、エアーの通り道を分岐して狭めることに他なりません。
エアーの通り道が狭くなれば、ブロワーの熱風(繰り返しますが、真夏には80℃超にもなる)によって内部で汚泥が乾き、固着して、目詰りを起こしてしまいます。
これでは従来型ポーラスディフューザーの二の舞ですが、実際にこれが原因でA社の縦型散気管は目詰りを起こしています。
水中でエアーを吐き出すと同時に逆流が起こるのは、単純なパイプ穴でも、OHRエアレーターでも、ゴム製ディフューザーでも、どれでも同じです。これは自然法則で、避けられません。
ポイントは、逆流した汚泥がスルッと出て行くか、あるいは溜め込んでしまうかです。
スルッと出て行かせるためには、エアー吐出口は絶対に1個で、大口径でなければなりません。2個でも4個でも、ダメです。
汚泥が残ったり、溜まったりする箇所が散気管内部に存在しないことが、目詰りしないことの第1条件です。
チェック❷:汚泥水の通り道を塞ぐように、構造物が密集して取り付けられているか、いないか
複雑な構造物がぎっしりと縦型散気管の内部に取り付けられていたら、どうなるでしょうか。
特に開放型の曝気槽の中には、風に吹かれて飛んできた落ち葉などが入り込みます。比較的小さな夾雑物であっても、複雑な構造物には引っかかってしまいます。
また排水の中に、カルシウム成分が多く含まれているケース(製紙排水や乳業排水など)では、複雑な構造物がぎっしりと詰まっていると、瞬く間にスケールが形成されてしまいます。
あるいは、流動担体が入っている曝気槽で使ったら、流動担体が引っかかって目詰りしてしまうことは誰の目にも明らかです。
流体の流れを遮ることなく、かつ強力に気−液の接触を図ることのは、とても難しいことです。
気−液反応促進のために複雑な構造にすると、目詰りの危険が増し、シンプル過ぎると酸素溶解効率が上がらない。
《目詰りを防ぐためには、エアー吐出口は絶対に1個だけ》という制限が加わると、なおさら難易度がアップします。
「エアー吐出口が1個だけ」と「流体の流れを遮らないシンプルな構造物」を兼ね備えた散気管でないと、長期に渡って安定的に使い続けることはできません。
散気管の実力を試す、簡単な方法
「目詰りしない」「目詰りしにくい」とPRしている散気管メーカーに対して、以下に挙げるような過酷な条件を示して、目詰りなし・ノーメンテの実績があるかどうか尋ねてみると、本当かウソかはっきりわかります。
(実際に散気管を使う条件よりも、より厳しい条件下での実績がなければ、目詰りナシを担保できません)
- A) 豚の糞尿処理で、曝気槽のMLSS濃度が15,000mg/Lである。
- B) 製紙工場の排水で、紙に混ぜるカルシウム成分が多く含まれている。
- C) 余剰汚泥の濃縮槽で、MLSS濃度が50,000mg/Lである。
さらに、「目詰りなし&ノーメンテ」を10年保証できるか、と問えば、ほぼすべての散気管メーカーは退散します。
どの散気管を採用するかの決定は、散気管の定期交換を強いられるかどうかや、散気管の目詰りによって排水処理の不調に悩まされ、無駄な薬品代の出費が続くかどうかの、別れ道に他なりません。
貴工場の排水処理を受け継ぐ次の世代にツケを残さないためにも、是非とも散気管選びは慎重になさってください。