ファインバブル(マイクロ・ナノバブル)技術の見分け方
市場に氾濫しているマイクロバブル発生装置の、優劣判定方法
ファインバブル(マイクロ・ナノバブル)発生装置には様々なタイプ・発生方式の製品があって、どの製品が使用目的にマッチするのか、見極めに苦労します。
どのような物差しを当てれば優劣が判定できるのか、ご説明いたします。
見分け方❶:純水でマイクロバブルを生成できますか? 有機溶剤ではどうですか?
マイクロバブル発生装置のメーカーにたいして、「純水でマイクロバブルを生成できますか? 有機溶剤ではどうですか?」と質問してみてください。
Noと回答してくれば、化学反応の促進目的には不適格です。
もし、実際には、純水や有機溶剤でマイクロバブルを作ることが目的ではないとしても、この質問は有効です。
気−液を強力に砕いてミキシングする作用がなければ、純水や有機溶剤ではマイクロ・ナノバブルを生成できません。
つまり、マイクロバブル発生装置の気−液反応技術のレベルは、この質問だけでおおよそ判定できるのです。
マイクロバブルは、イオン化物質や不純物が多く含まれた水だと出来やすく、そうでないと出来にくい、ということが知られています。
- 海水は、イオン化した様々なミネラルがリッチに含まれているので、非常に出来やすい。
- ウェブサイト上で、海水でマイクロバブル生成を行っている 動画をよく目にしますが、何も自慢にはなりません。
- 排水や工業用水では、出来やすい。
- 含まれる不純物が核となって、溶存ガスがバブル化しやすいため。
- 水道水では、出来にくい。
- 水道水でマイクロバブルをつくれない技術は、実は数多いのが実情です。展示会場では、水道水にこっそりと塩を入れて、わざとマイクロバブルができやすい状態にして実演しているところがあるそうですから、要注意です。
- 純水となると、マイクロバブルを生成できない技術が普通です。
- イオン化物質が、ほとんど含まれていないため
- 有機溶剤となると、マイクロバブルをつくれる技術はほとんど見当たりません。
- 密度・比重・粘度が小さく、ガスが溶解・離脱しやすいため
そこで最初に、「貴社の技術では、純水でマイクロバブルを生成できますか? 有機溶剤ではどうですか?」と質問すると、技術レベルを判定できる、というわけです。大多数の技術は、この篩(ふるい)で脱落します。
見分け方❷:透明な状態こそ、優れているのか?
「真っ白く白濁した《マイクロバブル》は、《ナノバブル》より価値が低い」と主張する会社がありますが、これは誤りです。
真っ白く白濁した、濃厚なマイクロバブルをつくれないから、そんなゴマカシを言うわけです。
気–液反応の目的に応じて、A. 真っ白く白濁したバブル群が必要なケース《=マイクロサイズのバブルが有効》と、B. 真っ白いバブルは不要のケース《=ナノサイズのバブルが有効、あるいは粗大バブルが有効》の2通りあります。
つまり、目的次第で最適なバブルサイズは変わるのに、「微細こそ優れている」という主張はナンセンスです。
見分け方❸:技術的難易度が低いテーマだけを実績として載せている場合
例えば、【DO(溶存酸素)が0mg/L の井戸水があって、その水を魚の養殖に使うためにDO を上げたい】という場合に、あえてマイクロ・ナノバブルを生成する必要はありません。散気管を使って、水中でエアーをバブリングするだけで酸素はどんどんと溶解し、飽和(20℃で9.09mg/L)まで酸素は溶けます。マイクロ・ナノバブルの生成には、バブリングに比べて数十倍ものエネルギーを要しますので、無駄な費用を避けるためにも、マイクロ・ナノバブル技術を使うべきか、バブリングで済んでしまうのか、事前の見極めがとても大切です。
気体の種類 | 飽和値 |
---|---|
ヘリウム(He) | 1.57 mg/L |
水素(H2) | 1.62 mg/L |
エアー原料の酸素(O2) | 9.09 mg/L |
オゾン(O3) ※ただし水温25℃時 | 13.9 mg/L |
窒素(N2) | 19.0 mg/L |
メタン(CH4) | 23.58 mg/L |
純酸素(O2) | 43.4 mg/L |
二酸化炭素(CO2) | 1,688 mg/L |
硫化水素(H2S) | 3,800 mg/L |
塩素ガス(Cl2) | 7,290 mg/L |
二酸化硫黄・亜硫酸ガス(SO2) | 112,800 mg/L |
右の図は、20℃の水に対する気体の飽和値をまとめたものです。
ご覧のとおり、ガスの種類ごとに飽和値は大きく異なります。
この飽和値までであれば、粗大バブルによるバブリングでも到達できます。
溶解しやすいガス(二酸化炭素や塩素)では、わざわざマイクロ・ナノバブル技術を使わずとも済んでしまうテーマがほとんどです。
例えば、炭酸飲料を作る工程では、二酸化炭素(炭酸ガス)をマイクロ・ナノバブルにしてはいません。二酸化炭素は溶けやすいガス種で、粗大な気泡でも十分に良く溶けるからです。
※飽和値が非常に高いガスであっても、過飽和(飽和値を上回る高濃度)に溶かす、あるいは瞬時に溶かす必要がある場合には、マイクロ・ナノバブル技術を使う価値があります。実例につきましては、お問い合わせください。
これに対して、溶解しにくいガスや、生成にコストがかかるガス(ヘリウム、水素、オゾン、純酸素など)を効率的に液中に溶かすには、マイクロ・ナノバブル技術は有効です。とりわけマイクロ・ナノバブル技術が有効なのは、オゾン処理です。
排水をオゾンで酸化処理する際に反応効率が低いと、未反応オゾンが多量に放出されるため、廃オゾン処理設備で別途分解しなければなりませんが、OHR 技術を使えば廃オゾン処理設備を使わないオゾン処理が可能です。
詳しくは、以下のURL をご覧ください。
https://www.ohr-labo.com/mixer/mix5/
マイクロ・ナノバブル技術のPR で、排水処理の【曝気】(ばっき)への適応例を見かけますが、これはナンセンスです。
世界中で圧倒的に普及している排水処理手法である【活性汚泥法】では、微生物群を入れた曝気槽に排水を入れ、微生物の作用によって浄化します。微生物群の呼吸に必要な酸素は、散気管(ディフューザー)を使ってエアーをバブリングして供給しますが、散気管の溶解効率はせいぜい10% ほどと低いです。つまり、残り90% の酸素は、水中に溶けることなく、大気中に放出されます。
一見すると非常に無駄が多いため、ほぼ100% の溶解効率を誇るマイクロ・ナノバブル技術は非常に魅力的に映ります。
しかし、マイクロ・ナノバブルはバブルが微細すぎて浮力が小さく、曝気槽内を攪拌できません。水より重い微生物群は槽底に堆積し、腐敗(嫌気化)し、ひいては酸素欠乏等の様々な問題を招きます。マイクロ・ナノバブルの生成には多大なエネルギーを要しますが、使用用途によってはかえってマイナス効果を生んでしまいます。
より詳しくは、マイクロバブル発生装置は、散気管の代わりとして曝気に使えるか?で解説していますので、ご覧ください。
「マイクロ・ナノバブル技術で、貧酸素水のDO 値を高めました」といったPR は、散気管などの従来技術でも容易に達成できることですから、なにも目新しさはありません。エネルギーの無駄遣いです。
本当にマイクロ・ナノバブル技術を適用してメリットが出るのか否か、まずは冷静に分析なさってください。
見分け方❹:過飽和の領域に、どれほどいくか
飽和値を上回る濃度まで気体が溶けた状態を「過飽和」といいます。この領域にどれほど踏み込めるかで、技術レベルの差が歴然とします。大気圧の下で、つまり加圧せずに、気体をどれほど過飽和まで溶かせるか実験すると、飽和値を100% とした場合に、A 社の技術では104% が限界ですが、B 社の技術では130% に達します。同じ「マイクロ・ナノバブル技術」といえども、非常に大きな技術差があることが、この例からわかります。
このテスト結果は差し上げますので、お問い合わせください。
お問合せ
見分け方❺:他の見極めポイント
- ⚫ 3 社の装置で生成したマイクロバブル水を1L のメスシリンダーに汲み取って、白濁したマイクロバブル群が何秒で消えるかテストした結果、K 社は90 秒、N 社は75 秒、O 社は170 秒でした。
持続時間が長いほど、生成されたマイクロバブルのサイズが小さく、気-液反応であれば効率が高く、浮上分離であればSS分離性能が高いことを意味します。生成できるバブルのサイズにも、技術的優劣があります。 - ⚫ 純酸素ガスを使って高濃度酸素水を作っても、開栓して大気中に置いておけば、次第にDO(溶存酸素)は減少していきます。
2 社のマイクロ・ナノバブル発生装置を使い、それぞれDO が40mg/L の酸素水を作ってその減少率を比較したところ、 A 社の技術では2 時間で半分の20mg/L まで減少しましたが、O 社の技術では2 時間後でも1 割減の36mg/L にとどまりました。
酸素ガスを使えば、どのような技術を使っても、飽和値付近の40mg/L までは容易に到達します。しかし減少率に大きな差が生まれたことから、【溶け方】にも優劣があることがわかります。
いずれの資料も差し上げますので、お気軽にお問い合わせください。
お問合せ