OHRエアレーターの10年保証の詳しいご説明

OHRエアレーターは、世にデビューさせてから40年を超えていますが、「10年経っても15年経っても、ノーメンテナンスで使い続けられる」と公言しているとおりであることを、数々の現場で実証してまいりました。例を挙げますと……

  • A) 消石灰が5,000mg/Lも含まれた排水において、4年ごとに槽から水抜きして、19年間にわたってOHRエアレーターに目詰まりや磨耗が無いことをチェックし続けたケース【K社U工場】
  • B) 18年間使ったOHRエアレーターを、旧工場から新工場へ移して使い続けたケース【M社T工場からC工場へ移設】
  • C) 26年間使い続けてまだ使える状態ではあるが、もう十分に使い込んだので、新品のOHRエアレーターに差し替えたケース【D社C工場】

他社の散気管広告には、「目詰まりしない」「ノーメンテンス」というPRが溢れていますが、そういった散気管を導入した会社から「実際には目詰まりして困っている」という報告をいくつも受けています。
また目詰まりに関連するものだけではなく、実排水では絶対にあり得ない酸素溶解効率の高さをPRしている散気管もあります。嘘のPRに騙されてしまった排水処理の現場の方々から日々SOSの連絡を受ける我々は、苦々しい思いを長年して参りました。

そこでこの度、OHRエアレーターの比類ない長寿命を明確化する目的で、世界初の【散気管の10年保証】を開始します。
実はもう何年も前から実質的に10年保証を行ってまいりましたが、それを正式に対外告知することと致しました。
どのようなケースが10年保証の対象であり、かつ、どのような内容の保証であるのか、以下にご説明致します。

なお、対象のOHRエアレーターは、納品の圧倒的大多数を占めるAE-130N型です。小型のAE-50N型も長寿命であることに違いありませんが、主に水深が浅いタンクの撹拌や、ピット内の堆積物巻き上げのために使われますから、10年保証の条件の一つである「微生物処理に使うこと」を満たさないケースが多いです。また内部の通り道がAE-130Nほど広くないため、10年保証の対象にはできません。

10年保証の対象となる場合/1年保証すらできない場合

OHRエアレーターが「目詰まりしない散気管」として名が通るにつれ、当社には過酷な悪条件の相談が持ち込まれることが増えていきました。それに伴い、一般的な散気管では瞬く間に目詰まりしてしまうような困難な現場に使われた実績が、40年超にわたり数多く蓄積されています。
たとえば、燃焼排ガスに含まれる硫黄分を除去する「脱硫」では、石灰や水酸化マグネシウムを多量に含んだ廃液をエアー曝気で酸化処理する工程があります。このような過酷な環境下でも、ある現場ではOHRエアレーターは17年間にわたり目詰まり無しで稼動し続けています。
しかし、こういった現場は10年保証の対象ではありません。1年保証さえできません。
それは、排水・廃液に含まれる成分が変わって、突如としてスケールが形成されたとしても、なんら不思議ではないからです。
10年保証をするということは、お客様の工場から排出される排水・廃液の成分や、曝気槽の汚泥濃度などが10年の間にある程度変化しても目詰まりを起こさないことを当社が請け負う、ということです。つまり、散気管の製造責任だけにとどまらず、当社のあずかり知らない事柄までを含めた保証になりますから、初めから困難な条件であることが分かり切っている場合には、スケールや目詰まりの発生無しは、とうてい保証できません。

10年保証の対象かどうかをチェックするフローチャートを以下に示します。
診断項目が多く、10年保証のハードルが高いようにお感じになるかも知れませんが、特殊な排水を除いて、ほとんどの排水は対象です。

10年保証チェックフローチャート 用途は微生物処理であり、化学反応や無機物質スラリーが対象ではない 用途は微生物処理であり、化学反応や無機物質スラリーが対象ではない 消石灰、カルシウム、珪藻土などの無機物質が人為的に添加されていない シリカ、鉄粉、活性炭、コンクリ屑など、高硬度の微粉体が含まれていない ヒモ、毛、パルプ繊維、その他の夾雑物がスクリーンで除去されている 極端な間欠運転をおこなわない 規定量のエアー量を供給する 槽底にスラッジが多量に堆積していて、それを除去しないで設置する場合 日本国内での使用である 当社が描いた配置プラン図
どおりに設置する 万が一トラブルが起きた場合、原因究明にご協力いただける

1. 過酷な条件であるものの、10年保証の対象であるケース:

(1)畜産排水(養豚・養牛の糞尿汚水)など、高濃度BODの場合
➜OHRエアレーターは、例えば養豚の糞尿排水(糞尿混合状態でBOD20,000mg/L)であっても、目詰まりなし&ノーメンテナンスです。つまり、10年保証の対象です。
ただし、飼料にカルシウム等のミネラル成分を多量に添加しているため、スケーリングを起こしやすい排水になっている、といった場合には、保証対象外です。詳細は2(3)をご覧ください。
(2)流動担体と組み合わせて使う場合
➜これまでに幾つかの流動担体と組み合わせて使われており、問題ないケースがほとんどです。
ただし担体のサイズが大きすぎたり、高硬度すぎる場合などは、OHRエアレーターとマッチしません。流動担体と組み合わせて使う場合は必ず事前にご相談ください。
(3)MLSS(微生物濃度)が非常に濃い場合
➜OHRエアレーターはMLSS濃度が20,000〜30,000mg/Lの超高濃度汚泥中でも、目詰まりなし&ノーメンテナンスです。つまり、10年保証の対象です。
(4)たとえば脱窒処理のために、間欠運転*を行う場合【*間欠運転:一定時間ごとに、ブロワーON/OFFを繰り返す曝気プログラムのこと】
➜アンモニア態窒素が高濃度に含まれた排水の場合、好気環境に置く「硝化」と、嫌気環境に置く「脱窒」の2段階を踏んで除去しますが、それぞれに別個の槽を使うのではなく、1つの曝気槽で間欠運転をおこなって済ませることがあります。
1日のうち数時間だけ曝気を止める、といった一般的におこなわれる程度の間欠運転プログラムは、10年保証の範囲内です。しかしながら、運転時間と比べて停止時間が極端に長いような極端な間欠運転の場合は、保証できません。詳細は2(6)をご覧ください。

2. 1年保証すらおこなえないケース:

(1)化学反応用途で使用する場合
➜OHRエアレーターは微生物処理に限らず、化学反応用途(気−液反応、脱気、中和・pH調整など)にも積極的に使われ、反応効率を改善した実績を積み重ねています。OHRエアレーター AE-130N型は耐久性を強化した特殊ポリプロピレン製であり、幅広い耐食性を有していますが、液中にポリプロピレン材を侵す成分が含まれている場合は、それがたとえ微量であっても、長年に渡って使用するとダメージを及ぼすおそれがありますので、保証対象外です。
➜ただし、保証はできないものの、実際には長期にわたり目詰まり無しで稼動し続けている実績を豊富に有しています。詳細は、別資料『化学反応用途向け納入実績集』をご覧ください。
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(2)無機物質スラリーで使う場合
➜セメント製造排水、鉄鋼スラグ、脱硫廃液スラリー(石灰や水酸化マグネシウム含有)、コロイド状の金属微粒子が高濃度に含まれる排水、消石灰と炭酸ガスを反応させて炭酸カルシウムを製造する工程に使う、などのテーマの場合は、保証の対象外です。
(微生物汚泥にはおのずと微量の無機物質が混入するものですが、それが人為的に添加されたものでない限り、10年保証の対象です)
(3)消石灰、 カルシウム、 珪藻土などの無機物質が人為的に添加されている排水の場合
➜冒頭で紹介したとおり、ある現場では、高濃度の消石灰が含まれた排水(15,000mg/LのMLSSのうち、30%が消石灰)で19年間使われましたが、目詰まりしませんでした。しかし排水に含まれる成分の変化など、当方の責に帰さない理由で、突如として目詰まりやスケーリングが発生することがあり得るため、保証はできません。
(4)シリカ、鉄粉、活性炭、コンクリ屑、セラミックス粉など、高硬度の磨耗性微粉体が多量に含まれた排水の場合
➜OHRエアレーター AE-130N型は、耐久性を強化した特殊ポリプロピレンで作られており、最大限、磨耗・腐食に耐えるよう設計されていますが、排水中に高硬度の磨耗性微粉体が混入するようなケースでは、目詰まり・磨耗無しを保証できません。OHRエアレーター内部では猛烈な旋回流が形成されますので、徐々に摩耗してくる可能性があります。
➜なお、製造工程で使用する珪藻土やパーライトが多量に曝気槽に入っている中で、丸1年間の実地テストを行って磨耗ゼロを確認した事例がありますので、OHRエアレーターの耐摩耗性は相当に強いといえます。しかし、保証できる性質のものではありません。
(5)結束ヒモ、毛(豚毛や人毛)、パルプ繊維、その他の夾雑物(ゴミ)が含まれた排水の場合
➜ゴミがOHRエアレーターの内部に引っかかったり、ブロワー停止時に配管内に逆流したゴミが引っかかったりするリスクがあります。OHRエアレーター内部に夾雑物が少々引っかかったからといって性能低下は起きませんが、それが引き金となって思わぬトラブルが起きる懸念がありますので、保証対象外です。事前にスクリーンで夾雑物を除去できていれば、問題ありません。
(6)運転時間と比べて停止時間が極端に長いような極端な間欠運転の場合
➜OHRエアレーターは、高濃度MLSS下で、1ヶ月に1度しか運転しないような極度の間欠運転をおこなっても、目詰まりしなかった実績を有するほど、間欠運転に強い散気管です。
しかしながら、それは個々の現場判断でおこなわれた結果であり、あらゆる排水処理場において、長期のブロワー停止を伴う間欠運転をおこなっても目詰まりしないことを保証できる性質のものではありません。極端な間欠運転は、たとえば曝気槽の容積が排水負荷に対して過大であるとか、省エネを突き詰めるためとか、工場の定修期間中は排水流入がないためとか、嫌気条件を保ちつつエアー曝気で撹拌するといった理由でおこなわれることがありますが、そういったユーザー側の事情による特異な運転にまで当社が責任を負うことはできません。
(7)規定量のエアー量を供給しなかった場合
➜OHRエアレーター AE-130N型の最低供給エアー量は0.5m³/min/本ですので、短時間であろうとも、これを下回るエアー量での運転は絶対に不可です。0.5m³/min/本までエアー量を減らしても、溶存酸素量が過剰に高くなってしまう場合には、間欠運転をおこなってください。
(8)水抜きせずにOHRエアレーターを設置する場合に、散気管本体が埋もれてしまうほどの堆積物が槽底にある場合
➜設置時にOHRエアレーター本体が堆積物の中に押し込まれることで、エアー吐出口や水吸込み口などに多量のスラッジが入り込んで閉塞させたり、曝気運転中に周囲の堆積物が崩れてOHRエアレーター本体を埋もれさせてしまったりする危険があるためです。
(9)設置現場が外国である場合
➜万が一のトラブルの際に、当社が現場に出向いて実地確認することが困難であるため、10年保証は日本国内に限らせていただきます。
(10)当社が描いた配置プラン図に従って設置いただかなかった場合
➜当社では個別案件ごとに、必ず配置プラン図を描かせていただきます。散気管の性能を十分に発揮するには、最適な配置が不可欠であるためです。もし当社の設計どおりに設置いただけなかった場合には、保証の対象外となります。
(11)OHRエアレーターにトラブルが起きた場合、原因究明にご協力いただけない場合
➜10年保証の最大の目的は、お客様の排水処理システムを安定化させることですから、トラブルの原因究明にはお客様のご協力をお願い致します。本サービスは、お客様の原因究明へのご協力なしに、新品をご提供することをお約束する趣旨ではありません。

10年保証の流れ

設置後10年間で、目詰まり・破損等、正常に使用できない状態に陥った場合、新品を無償提供します

前述の条件を満たした場合に、10年保証をおこないます。
10年保証の起算日把握と保証書発行のために、OHRエアレーターの使用開始日を必ずお知らせください。電話やメールで日付をお知らせいただければ結構です。
使用開始日から起算して10年経過日までに、目詰まりや破損など、散気管の構造上の不具合(欠陥)によって正常に使用できない状態に陥った場合、1回限り、新品を無償でご提供致します。

※交換工事代はご負担ください。対象槽の上がオープン構造の場合、OHRエアレーターは水抜き無し&アンカー止めなしで設置できますから、万が一交換する場合でも費用はさほどかかりません。
10年保証図